ネパール、Discord投票で暫定首相選出
― 正式制度ではないが「実質的選挙」となった前例 ―
前例のない首相選出
2025年9月、ネパールで前代未聞の出来事が起きた。若者を中心とする市民たちがオンラインコミュニティ「Discord」を通じて暫定首相を選び、その結果が現実の政治人事に反映されたのだ。選ばれたのは元最高裁判事スシラ・カルキ氏で、同国初の女性首相として暫定政府を率いることとなった。
背景にあった「SNS禁止」と若者の反発
発端は、ネパール政府による突然のSNS禁止措置だった。FacebookやTikTokといった主要アプリが遮断され、自由な言論空間を奪われた若者たちは強く反発。雇用不足や汚職への不満も相まって「Z世代」を中心に抗議運動が拡大した。
彼らは情報発信と議論の場をDiscordへ移し、数万人規模が参加する大規模なサーバーを形成。そこで政治的議論や候補者選出、投票が行われた。
Discord投票の位置づけ
Discordでの投票は、憲法や選挙管理委員会に基づく正式な選挙ではない。本人確認や有権者資格の担保はなく、海外からの参加も可能で透明性の課題は大きい。
しかし、Al JazeeraやIndian Expressなど複数の国際メディアは、この投票が事実上の「市民による選挙プロセス」として機能したと報じている。選ばれたカルキ氏が実際に暫定首相に就任したことで、「制度的には無効、しかし政治的には有効」という二重性を帯びた出来事となった。
デジタル民主主義の可能性と課題
今回のDiscord投票は、若者世代が自発的に参加し、候補者を議論・選出するという新しい民主主義の形を示した。従来の制度では排除されがちな声が、オンライン空間を通じて可視化された点は大きな意義がある。
一方で、参加者資格の曖昧さや不正投票の懸念、法制度との不整合といった課題も浮き彫りになった。
世界への示唆
ネパールの「Discord首相選出」は、形式的には選挙ではなくとも、市民の意思を示し、実際の政治を動かした。これは「制度に代わる選挙的機能」が、非公式な活動から生まれ得ること、オンラインで実現し得ることを示す歴史的な事例であり、今後のデジタル民主主義の可能性とリスクを象徴している。
https://www.aljazeera.com/news/2025/9/15/more-egalitarian-how-nepals-gen-z-used-gaming-app-discord-to-pick-pm?utm_source=chatgpt.com
https://www.reuters.com/world/asia-pacific/how-gen-z-protests-over-corruption-jobs-ousted-nepal-pm-oli-2025-09-09/?utm_source=chatgpt.com
https://indianexpress.com/article/explained/explained-global/nepal-pm-discord-gaming-chat-app-gen-z-protests-10248009/?utm_source=chatgpt.com
https://www.indiatoday.in/technology/news/story/gen-z-protestors-have-chosen-next-nepal-pm-via-vote-on-discord-what-is-discord-and-how-it-is-used-2786279-2025-09-12?utm_source=chatgpt.com
https://www.nytimes.com/2025/09/11/world/asia/nepal-protest-genz-discord.html