中国、新たな排出削減目標を発表 — COP30を前に国際交渉の流れを変える可能性

2025年9月25日 最終更新日時 : 2025年10月1日 susumoooon

2025年9月24日、中国の習近平国家主席は国連総会の気候関連会合で、従来の方針を上回る新たな排出削減目標を発表しました。世界全体の約30%の温室効果ガスを占める最大排出国が「数値で測れる削減率」を初めて提示したことで、11月のCOP30（ブラジル・ベレン）を前に、国際社会の交渉構造や各国の姿勢に大きな影響を与えると見られています。

＜報道内容＞

国連総会での発表

習主席はビデオ演説を通じて以下を具体的に示しました。

  • 2035年までに排出量をピーク比で7〜10%削減する：これまで「2030年までにピーク」とだけ言及してきたのに対し、削減幅が明示されました。
  • 一次エネルギーに占める非化石エネルギー比率を30%以上にする：再生可能エネルギーと原子力を含む「非化石」のシェアを明確化し、エネルギーミックスを数字で定義。
  • 風力・太陽光発電の設備容量を2020年比で6倍超（約3.6テラワット）に拡大する：世界最大規模の再エネ拡大を目標に掲げ、産業界や投資家にとっても具体的なロードマップとなる数値です。

この演説は国連公式放送（UN Web TV）や新華社通信を通じて事実確認されています。

報道の広がり

  • Reutersは「中国が初めて具体的な削減率を提示した」と速報。世界の排出国責任をめぐる議論で画期的と指摘。
  • AP通信は、クリーン車普及や気候レジリエンス強化策への言及も加え、COP30の交渉を意識した包括的なメッセージだったと整理。
  • Financial Timesは「新目標は実務的でありながら、国際的に期待されていた水準に比べると控えめ」としつつ、「投資家や企業にとって具体性が高まった点は評価できる」と伝えました。
  • Al Jazeeraは中東の視点から「再生可能エネルギー6倍拡大」という規模の大きさに注目。
  • PBS NewsHourは「世界最大排出国の方針が明確化された」ことを主要ニュースとして扱いました。
  • Argusなどエネルギー専門メディアは、「COP30を前に明確な数値シグナルを投じた」とし、石油・ガス市場にも心理的な影響を与える可能性を論じています。

＜従来からの違い＞

数量目標の明示

従来の中国は「2030年までに排出ピーク」「2060年までにカーボンニュートラル」という“方向性”の目標にとどまっていました。これは国際的には「実施努力を測る基準が曖昧」と批判される原因でもありました。今回、初めて「ピーク比で7〜10%削減」という明確な数値が示され、国際比較可能性が生まれたことは画期的です。

エネルギーミックスの具体化

非化石エネルギー比率30%や再エネ設備容量3.6TWという具体的数値は、政策・投資判断の指標として重みがあります。とりわけ3.6TWという目標は、現状の世界全体の再エネ設備容量に匹敵する水準で、中国が世界の供給網と価格形成に与える影響は極めて大きいと予測されます。

評価の分かれ目

Financial Timesをはじめ複数メディアは「数値の明示は一歩前進だが、7〜10%という幅は控えめ」と指摘しています。IPCC報告書が求める水準（2035年までに40〜60%削減が必要との試算）と比べると差が大きいのは事実です。ただし、過去にも中国は「再エネ導入量」「EV販売目標」などを当初の計画より前倒しで達成してきた実績があり、今回も「実績が目標を上回る可能性」があると見る専門家もいます。

＜影響と展望＞

国際交渉の基準線

COP30を控えるこのタイミングでの数値提示は、各国に新たなプレッシャーを与えることになります。特にインドや新興国は「世界最大排出国が具体的削減を提示したのだから、我々も応じざるを得ない」との構図が強まる可能性があります。結果として、交渉の「最低基準」が引き上げられ、全体の削減野心が底上げされるかもしれません。

市場への波及

中国の政策は、グリーンボンド市場や再生可能エネルギー関連投資に即座に反映される傾向があります。実際、2025年の中国グリーンボンド発行額は前年同期比で+129〜188%の増加が確認されており、新目標がさらなる資金流入を後押しすると見られています。また、再エネ需要拡大は世界的なサプライチェーンにも影響し、風力タービンや太陽光パネルの供給価格に波及することが予想されます。

残された課題

一方で、今回の「7〜10%」という幅は、気候科学の要請レベルから見れば大幅に不足しています。各国から「野心度が足りない」との批判が強まる可能性は否定できません。また、石炭火力の国内依存をどこまで削減できるかは依然として不透明です。これらの課題をどう克服するかが、中国の真の評価を左右するでしょう。

まとめ

中国の新たな排出削減目標は、従来批判されてきた「数値の曖昧さ」を克服する大きな一歩となりました。世界最大の排出国が国連総会の舞台で「定量的削減率」と「エネルギーミックスの具体目標」を掲げたことは、国際交渉における意味合いが大きく、COP30の議論に直結するシグナルです。
評価は「控えめ」という声もありますが、中国が過去に目標を超えて達成してきた実績を踏まえれば、「実績が目標を超える」シナリオも現実的です。投資家にとってもエネルギー業界にとっても、この数値が持つインパクトは無視できません。

エビデンス・参考URL

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