人事の重心が「採用・攻め」から「定着・活躍支援・守り」へ——パーソル人事部トレンド調査2026、経営課題がヒトに集中

68
総合スコア
インパクト
13
新規性
13
未注目度
13
衝撃度
12
証拠強度
9
実現性
8

情報源:https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/hr-trend2026/
収集日:2026年9月13日
スコア:インパクト13 / 新規性13 / 注目度13 / 衝撃度12 / 根拠9 / 実現性8 = 68点

変化の核心:人事の主戦場が「人を採る」から「今いる人を辞めさせず活かす」へ移り、人材投資の設計思想が入口(採用)から滞留・活躍(リテンション)へ転換する。

概要

パーソル総合研究所は2026年9月、従業員300名以上企業の人事・経営企画・経営層を対象とした「人事部トレンド定量調査2026」を公表した。採用・育成・制度・働き方・AI活用など主要な人事領域のトレンドを把握する調査である。労働力不足を背景に企業の経営課題がますます「ヒト」に集中し、人事課題の重心が新規採用から既存人材の「定着・活躍支援」へシフト、「攻めより守り」の姿勢が鮮明になりつつあると分析している。2022年調査と比べ、「予算達成度や業績の良し悪し」への関心が大きく減少し、「従業員の離職防止」「景気動向」も低下する一方、「戦略的人材の採用強化」「労働組合の要請」はわずかに上昇した。

何が新しいか

これまで人事の主要課題は「いかに優秀な人材を採用するか」という入口の競争が中心だった。今回の調査は、その重心が「今いる人材を辞めさせず、長く活躍してもらう」というリテンション・活躍支援へと明確に移ったことを定量的に示す。人材を「確保する対象」から「維持・活用する資産」へと捉え直す発想の転換である。「攻め(採用)より守り(定着)」という戦略の反転が、企業規模300名以上の広い層で共通トレンドとして観測された点が新しい。

なぜまだ注目されていないか

人手不足・採用難は長く語られてきたテーマで、「定着重視」への移行は個々の企業では実感されていても、業界横断のトレンドとして構造化されにくい。調査レポートという地味な形式で、数値の変化が漸進的なため、劇的な変化として認識されにくい。採用強化のニュースは目立つ一方、「辞めさせない・活かす」という守りの施策は地味で報じられにくい。未注目度スコアが13点と高いのは、この重心移動が持つ人材戦略の構造転換という意味が十分に注目されていないことを示す。

実現性の根拠

本調査は300名以上企業の人事・経営層という実務の意思決定層を対象とした定量調査であり、トレンドの裏付けとして信頼性がある。労働力不足という構造要因は長期的に継続するため、定着・活躍支援へのシフトは一過性ではなく持続的な流れとなる可能性が高い。一方、「守りの人事投資」への転換が具体的な制度・処遇・配置の再設計として実装され成果を上げるかは企業次第で、掛け声倒れのリスクも残るため、実現性スコアは8点にとどまる。賃上げ原資や制度改革の負担が実行のボトルネックになりうる。

構造分析

この変化は、日本の労働市場が構造的な売り手市場に固定化したことの帰結である。少子高齢化で労働供給が細り、採用による量的確保が困難になる中、企業は「今いる人材の質的維持」へと戦略の軸足を移さざるをえない。処遇・配置・キャリア支援の制度再設計が経営課題の中心に据えられ、賃上げ・最低賃金上昇と相まって「守りの人事投資」が拡大する。人事部門の役割も、採用・選抜という機能から、従業員体験(EX)の設計・エンゲージメント向上という機能へと重心が移り、人的資本経営の潮流とも結びついていく。

トレンド化シナリオ

今後1〜3年で、リテンション・活躍支援を目的とした制度改革(柔軟な働き方、キャリア自律支援、社内公募、リスキリング)が広く普及していくだろう。従業員エンゲージメント調査やタレントマネジメントシステムの導入が標準化し、「定着・活躍」を測る指標が経営指標に組み込まれる展開が想定される。人的資本開示の要請とも連動し、人材への投資が経営の説明責任の対象となっていく。中長期的には、日本企業の人事戦略が「採用起点」から「リテンション・活躍起点」へと恒久的に再設計され、人材の質的維持が競争力の源泉として定着する。

情報源

https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/hr-trend2026/

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