過去最高から反落し始めた硫黄価格——中東10月の契約価格はカタール835ドル(前月比▲45ドル)、ADNOCは▲70ドル。6月の最高値1,650ドルからは下がったが前年の約3倍、リン酸肥料メーカーは減産を続ける
情報源:https://news.metal.com/newscontent/104145450-smm-flash-middle-east-october-sulfur-contract-prices-announced
収集日:2026-10-14
スコア:インパクト22 / 新規性14 / 衝撃度8 / 根拠12 / 実現性14 = 70点
変化の核心:湾岸の石油・ガス精製の副産物に依存する硫黄の価格高騰が6月を頂点に反転し始めたが、水準は平時の数倍のままで、肥料・化学の下流ではリン酸の減産と各国の補助金による吸収が続いている。
概要
Shanghai Metals Market(SMM、10/8)によると、中東の10月の硫黄契約価格(FOB)は、カタールが835ドル/t、クウェートKPCが820ドル/tでいずれも前月比45ドル安、ADNOC(ルワイス)は890ドル/tで70ドル安となった。中国の硫黄価格は2026年6月に約1,650ドル/tの過去最高を付けた。9月下旬の中国指標は1か月で約16%下落したが、なお前年の約3倍の水準にある。
何が新しいか
2026年上期の世界の硫黄輸出は、1,350万tから900万tへと約3分の1減り、減少分の約4分の3が湾岸由来とされる(IFPRI)。ロシアは2026年末まで輸出を禁止し、インドは輸出を停止、中国は5月に硫酸の輸出を停止した。高騰からの反転が始まった一方、供給制約は複数の国の措置が重なって続いている。
なぜまだ注目されていないか
硫黄は原油・ガス精製の副産物であり、原油価格の陰に隠れて一般には報じられにくい。需要の大きさも、リン酸肥料や金属精錬といった川下の用途を通じて初めて見える。価格が反落に転じたという見出しだけでは、水準が平時の数倍のままである点が伝わりにくい。
実現性の根拠
価格の反落は、SMMの契約価格と、Global Agricultureが報じた中国指標という複数のデータで確認できる。リン酸肥料の生産では、米Mosaicがフロリダ・ルイジアナの稼働率を約半分に下げ、中国・エジプト・ブラジル・インドも減産したと報じられている。見方は中国の価格情報会社SMMと、IFPRI・CRUのデータを引く農業業界紙によるもので、数値の解釈には幅がある。
構造分析
硫黄はリン酸肥料(DAP/MAP 10tに約4t)や金属精錬、化学の基礎原料として使われ、リン酸生産だけで2024年に約3,770万tを使用した。紛争前から需給は構造的に不足しており(2025年需要7,280万t、供給7,080万t、CRU)、供給の混乱がそのまま価格に表れた。リン酸肥料の価格は開戦後に約30%上昇して高止まりし、EUが農家の追加費用の最大70%の補填を認めるなど、各国の補助が影響を吸収している。
トレンド化シナリオ
今後1〜3年では、価格が平時に戻るのか、高止まりが続くのかが焦点となる。(仮説)高止まりが続けば、リン酸肥料の不足を通じて2027年の穀物単収に影響し、硫酸を使う銅・ニッケルの湿式精錬の採算にも遅れて波及しうる。湾岸以外での硫黄回収や硫酸のリサイクルが投資対象になる可能性もある。

