介護の「入口」が細る——ケアマネ事業所が8年連続減・ピーク比11.3%減、訪問介護は過去最多という逆転が起きる
情報源:https://www.joint-kaigo.com/articles/47848/
収集日:2026年8月19日
スコア:インパクト18 / 新規性15 / 注目度14 / 衝撃度20 / 根拠10 / 実現性10 = 87点
変化の核心:介護の制約要因が「介護職員が足りない」から「ケアプランを作る専門職がいないので給付そのものが起動しない」へ移り、供給側を増やしても入口が詰まる構造に反転しつつある。
概要
厚生労働省が2026年7月29日に公表した統計によれば、居宅介護支援事業所は2026年4月時点で全国35,551カ所となり、前年比392カ所(1.1%)減で8年連続の減少となった。2018年のピーク時点と比べると11.3%減である。減少の背景として指摘されているのは、ケアマネジャー自身の高齢化と後継者の不在で、中核となる職員が定年を迎えると事業所ごと閉鎖に至る例が多い。加えて主任ケアマネジャーの確保が難しく、新規開設も進みにくい。一方で訪問介護事業所は35,506カ所と過去最多を更新して7年連続の増加、デイサービスは42,125カ所で4年連続の減少と、サービス種別ごとに増減が真逆に振れている。
何が新しいか
介護分野の人手不足は長く語られてきたが、その議論はほぼ一貫して「現場で身体介護を担う介護職員が足りない」という枠組みで進んできた。今回の数字が示すのは、それとは別の場所で詰まりが起きているという事実である。居宅介護支援事業所は、利用者と制度をつなぐケアプランの作成機能を担う。訪問介護が過去最多を更新しながら、その手前にある事業所が8年連続で減っているという組み合わせは、単純な人手不足では説明できない。同じ介護という言葉で括られている領域の内部で、増える機能と減る機能がはっきり分岐し始めている。
なぜまだ注目されていないか
ケアマネジメントは利用者から見えにくい業務である。訪問やデイサービスのように毎日の生活に接触する形をとらないため、事業所数の増減が生活実感として現れるまでに時間差がある。また統計上は「介護サービス事業所」として一括りに集計されることが多く、居宅介護支援だけを取り出して継続的に見なければ8年連続という傾向は浮かび上がらない。訪問介護が過去最多という明るい見出しが同時に立つことも、逆方向の変化を覆い隠す方向に働く。制度の設計上、ケアプランがなければ給付が動かないという事実は関係者には自明であるが、その自明さがかえって論点として語られにくくしている。
実現性の根拠
これは予測ではなく、厚生労働省の統計として既に確定した数値である。前年比1.1%減という単年の変化幅は小さく見えるが、8年間積み上がった結果としてピーク比11.3%減という水準に達している。減少の主因とされるケアマネジャーの高齢化と主任ケアマネジャーの不足は、資格取得に実務経験年数と研修受講を要する構造から来ており、短期的に供給を増やせる性質のものではない。人口動態と資格制度の両方に規定されているため、傾向が数年内に反転する材料は現時点で見当たらない。
構造分析
介護保険サービスは、ケアプランが作成されて初めて給付が動く。つまりケアマネジメントは供給量の問題ではなく、制度が起動するかどうかを決める入口の関門にあたる。訪問介護の事業所が増えても、そこへ利用者を接続する機能が細れば、供給能力は使われないまま滞留する。事業所側から見ると、担当できる件数には上限があるため、事業所数の減少はそのまま受け入れ可能件数の天井として効いてくる。地域によっては新規の相談を受けられない状態が先に立ち上がり、サービスそのものは存在するのに利用に至らないという事態が起こりうる。デイサービスの4年連続減と訪問介護の増加という分岐も、在宅志向の強まりという需要側の変化と、事業所の採算構造という供給側の事情が同時に働いた結果と読める。
トレンド化シナリオ
短期的には、居宅介護支援事業所の減少が続く地域から順に、ケアプラン作成の待機や受け入れ制限という形で表面化する可能性が高い。次に想定されるのは、制度側の対応として一人あたり担当件数の上限緩和、ICTによる書類業務の圧縮、主任ケアマネジャー要件の運用見直しといった調整が議論の俎上に載る段階である。事業者側では、単独の小規模事業所が維持できず、法人による集約や他サービスとの併設が進む方向が考えられる。中期的には、ケアプラン作成支援へのAI活用が現実的な選択肢として浮上する余地があるが、ケアマネジメントは本人・家族との合意形成を含む業務であり、書類生成の効率化と判断そのものの代替は分けて考える必要がある。いずれにせよ、介護政策の議論の焦点が「担い手の総数」から「制度が起動する入口の容量」へ移っていく流れは続きそうだ。
情報源
https://www.joint-kaigo.com/articles/47848/

