国の『標準型電子カルテ』と情報共有サービスが2026年9月に本格リリース段階へ——バラバラだった診療情報が国基盤で連携する前提へ
情報源:https://digikar.m3.com/articles/medical-dx/article83
収集日:2026年9月23日
スコア:インパクト16 / 新規性15 / 注目度9 / 衝撃度15 / 根拠8 / 実現性9 = 72点
変化の核心:『電子カルテは各医療機関がベンダーごとに個別導入し、情報は施設内に閉じる』という前提が崩れ、国が共通基盤を提供して診療情報を医療機関横断で流通させる構造へ移る。
概要
厚生労働省が主導する「標準型電子カルテ」と「電子カルテ情報共有サービス」が、2026年9月のリリース分を含めて本格整備の段階に入った。2025年12月に成立した改正医療法では、2030年末までに電子カルテの普及率をほぼ100%とすることが明記されている。国は最小限の基本機能を備えた標準型カルテを無償に近い形で提供し、医療機関の間で診療情報を共有する仕組みを整える方針だ。山形県の診療所でのα版提供を経て、モデル事業による検証が進んでいる。
何が新しいか
これまで電子カルテは民間ベンダーの製品を各医療機関が個別に選定・導入するものであり、データ形式も画面設計もベンダーごとに異なっていた。診療情報は原則として施設内に閉じ、他院との共有は紹介状という紙ベースの様式で行われてきた。今回の転換は、国が製品そのものを提供する点と、情報共有サービスを標準機能として組み込む点の二つで新しい。公的機関がソフトウェアの供給者として市場に入るという構図は、日本の医療情報分野では前例が乏しい。
なぜまだ注目されていないか
医療DXは長年「進んでいない分野」として語られてきたため、新しい施策への期待値が低い。オンライン資格確認やマイナ保険証の導入過程での混乱の記憶もあり、また同じ話かと受け取られやすい。さらに標準型カルテの主な対象は小規模診療所であり、大病院の関係者にとっては自分ごとになりにくい。実際には、電子カルテ未導入が多く残るのは小規模診療所であり、そこを押さえることが全体の普及率を決める。地味だが要所を突いた設計になっている。
実現性の根拠
改正医療法で2030年末という期限が法定されており、政策としての後戻りが難しい。α版の提供とモデル事業という段階的な検証プロセスを踏んでおり、一斉導入による混乱を避ける設計になっている。またオンライン資格確認のネットワークがすでに全国の医療機関に敷設済みで、情報共有の物理的な基盤は存在する。一方で、既存ベンダー製品からの移行コスト、診療所の業務フロー変更への抵抗、共有される情報の範囲をめぐる同意設計は、いずれも未解決の課題として残っている。
構造分析
診療情報が施設内に閉じている限り、患者は転院や救急搬送のたびに病歴を語り直し、検査は重複し、薬の相互作用は見落とされる。情報が医療機関をまたいで流れるようになると、医療の単位が「施設」から「患者」へ移る。これはベンダーにとってはロックインの喪失を意味し、医療機関にとっては患者を囲い込む根拠の一つが消えることを意味する。同時に、集積された診療データは公衆衛生と創薬研究の資源になり、データの利活用をめぐる新しい論点が立ち上がる。共通基盤の整備は、技術の話であると同時に、医療における情報の所有者を問い直す作業でもある。
トレンド化シナリオ
今後1〜2年は、モデル事業の結果を踏まえて機能が拡充され、小規模診療所への導入が段階的に進む。既存ベンダーは標準型と競合する下位製品の縮小を迫られ、上位機能や専門科向けの差別化へ軸足を移すだろう。2028年前後には情報共有が一定の規模に達し、医療機関をまたいだ重複検査の削減や薬剤管理の改善が定量的に示されはじめる。その段階で、共有データの二次利用ルールと患者同意の設計が最大の政策論点になる。
情報源
https://digikar.m3.com/articles/medical-dx/article83

