世界初:エタノールからジェット燃料を作る「本物の工場」が稼働開始 ─ 航空の脱炭素に新しい道が開いた日

世界初:エタノールからジェット燃料を作る本物の工場が稼働開始


1. 何が起きたのか

アメリカの LanzaJet(ランザジェット)という会社が、
「エタノールをジェット燃料に変える世界初の商業工場」を正式に稼働させたと発表しました。

● ここが重要

  • これまでは 「実験」「少量生産」「試験販売」 のレベルにとどまっていた SAF(持続可能な航空燃料)。
  • 今回は、実際に商業として売り物になる量を作り始めたという点で世界初です。

つまり航空燃料の世界で、

化石燃料で飛ぶ → アルコールを燃料にして飛ぶ

という大きな転換の第一歩が、現実として動き始めたということです。

LanzaJet / PR Newswire の公式発表

  • 2025年11月13日、LanzaJet はプレスリリースで
    「Freedom Pines Fuels が、エタノールを原料にしたジェット燃料を商業スケールで生産する世界初のプラントとして、完全稼働し燃料を生産した」と発表。LanzaJet+1
  • このプラントは「First-of-a-Kind(FOAK)」のエタノール系アルコール・トゥ・ジェット(ATJ)技術を実装した施設で、ASTM 規格に適合するジェット燃料(Jet A-1とブレンド可能)を継続的に生産できる状態になったと説明。PR Newswire
  • 位置:米ジョージア州トロイトレン郡ソパートン(サバンナから約100マイル以内)。
  • 投資規模:3億ドル超。建設時に300人超を雇用し、操業後は約65人の直接・間接雇用を創出と説明。PR Newswire
  • 技術構成:
    • LanzaJet のエタノール系 ATJ技術
    • Technip Energies の Hummingbird(エタノール→エチレン)技術
    • 米エネルギー省(DOE)と LanzaTech が共同開発したオリゴメリゼーション技術
      などを統合した「フルインテグレーテッドなバイオリファイナリー」と位置付け。Bioenergy International+1
  • フィードストック(原料):
    • 農業残渣、エネルギー作物、都市ごみ(MSW)、回収炭素など多様なエタノール源を利用可能と説明。Bioenergy International+1


2. なぜ画期的なのか

■ 今までの SAF(持続可能な航空燃料)は「廃油」に頼っていた

これまでの SAF の主流は、

  • 飲食店などから出る使用済み油
  • 植物油の廃棄物
    などを元にした「HEFA」という方法でした。

しかし世界中で廃油には限りがあり、
量を増やすのが難しい=航空全体の脱炭素には不十分でした。

■ 今回は「エタノール(世界中で大量に作られているアルコール)」を使う

エタノールは

  • トウモロコシ
  • サトウキビ
  • 農業残渣
  • 都市ごみから作られる再生アルコール
    など世界中で大量生産されています。

そのため、
「廃油に頼るより、圧倒的に量が増やせる」
という構造的な強みがあります。

■ 飛行機は改造不要でそのまま使える

この工場で作られる燃料は、航空の国際規格(ASTM規格)をクリアしています。

つまり、

今の飛行機・空港インフラにそのまま入れて使える

というのも大きなポイントです。


3. 世界のメディアはどう評価したのか?

ここからは、一次情報と主要な専門媒体がどう報じたかを、分かりやすく整理していきます。

■(1)技術面:

「実験室の段階が終わった」(多数メディア共通)

技術系・エネルギー系メディアは、次のように評価しています。

  • 実験 → 小規模 → 試験販売から
  • 「商業生産」に進んだのは世界で初めて

という点で大きな前進だと報じました。

特に Bioenergy International や Energy Digital は、

「エタノールを航空燃料に変えるという“次の主流”が立ち上がった瞬間」

と紹介しています。

■(2)脱炭素の視点:

「航空業界の未来を変えるかもしれない」

航空機はCO2排出が多く、脱炭素が特に難しい分野と言われていました。

各メディアは、

  • 既存インフラで使える
  • 世界に大量にある原料(エタノール)が利用できる

という点から、

「航空の脱炭素化の実現に向けた現実的で有望な選択肢」

としています。

■(3)経済・産業の視点

「ただしコストと政策支援はまだ課題」

Bloomberg(Straits Times など転載)は、

  • コストが依然として高い
  • 米国の税制(45Z税額控除)と相性が悪い可能性
    などを指摘しています。

つまり、

技術としては大きな一歩だが、商業的に完全に成り立つかはまだ課題が残る

という冷静な分析もあります。

■(4)DOE(アメリカ政府)の評価

「規模は小さいが“次の工場”のための実証として極めて重要」

アメリカ政府(DOE)は、

  • 年間1,000万ガロンの規模は航空全体に比べると小さい
  • しかしこの工場から得られるデータが、
    将来のもっと大きな工場の建設コストやリスク削減に重要

と位置付けています。


4. 結論:世界が一致している評価

一次情報と各メディアの報道を統合すると、
共通している評価は次の3つです。


① 世界初の「商業レベルのエタノール→航空燃料工場」である

これは DOE・LanzaJet・各エネルギーメディアが一致して報じています。(事実情報)


② 航空燃料の脱炭素に向けた「新しい道」を切り開いた

従来の SAF(廃油ベース)では供給量に限界があり、
世界中の航空をまかなうのは不可能とされてきました。

そこに、

供給量が飛躍的に増やせる「エタノール・トゥ・ジェット」が本格稼働

したという意味は大きいと評価されています。


③ ただし、コストと政策が成功を左右する

  • 化石燃料より高い
  • アメリカの税制(45Z)がこの工場に不利
  • 生産規模はまだ小さい

などの点から、

技術は進んだが、経済面はこれからが勝負

という慎重な見方も出ています。


まとめ

  • ジェット燃料をエタノールから作る世界初の商業工場が動き始めた
  • 廃油に頼らない新しい SAF の形として、多くのメディアが「構造転換」と評価
  • ただしコストや政策の課題は残り、これからが本当の試練

「航空の脱炭素はまだ無理」と言われていた時代から、
現実的な選択肢が生まれる段階に入った

というのが、世界のメディアが示している現状です。


参考・エビデンス一覧(URL)

一次情報・公式発表など

業界・専門メディア

金融・一般メディア(コスト・政策面の指摘)

航空・技術系メディア

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