マイクロシフティング(Micro-shifting)──「時間を設計する働き方」の海外事例と報道動向


1. 一次情報:海外で確認された実践・制度導入例

1-1 Land O’Lakes, Inc.(米国・製造業)

製造大手 Land O’Lakes は、ミネソタ州メルローズなどの工場を含む生産拠点で、従来の固定12時間交替制を見直し、
従業員が自ら勤務開始時間やシフト長をある程度選べる柔軟シフト制度 を導入しています。

この制度では、昼前にスタートする短時間勤務や「午後休憩→夜再開」などの断続的ブロック勤務を許容。
2024年時点で60以上の施設に展開され、
応募数の増加・離職率の低下・育児・介護責任を持つ従業員の定着 に寄与したと報告されています。

特に製造業という「機械稼働時間が厳格な領域」で実現した点が注目されています。
これはマイクロシフティングの概念を実践に近い形で取り入れた代表的な事例です。


1-2 Owl Labs「State of Hybrid Work 2025」調査

米国のOwl Labs社による調査(2025年版レポート)では、
2,000人のフルタイム従業員のうち 約65%がマイクロシフティング的な柔軟勤務に興味あり と回答。
また、37%が「柔軟なスケジュールを提供しない企業は選ばない」 と答えています。

このデータは、働き方における「時間の裁量」の重要性が、すでに多数派のニーズになっていることを示しています。
一方で、企業側で正式に制度化しているケースはまだ限られています。


2. 報道内容:メディア・専門誌が描くマイクロシフティングの姿

2-1 トレンドとしての位置づけ

多くの国際メディアが、マイクロシフティングを「リモート/ハイブリッド勤務の次に来る働き方」と位置づけています。
特に Forbes は「マイクロシフティングこそ、9-5(定時勤務)の終焉を告げる動き」と報道しました。

若年層(Gen Z)や複数雇用層では「一日の中で複数の時間ブロックを使い分けたい」という傾向が強く、
「仕事のリズムを自分でデザインする」という意識が広がっています。


2-2 メリット・期待される効果

マイクロシフティングは、

  • 集中できる時間帯を自分で設定できる
  • ライフイベント(育児・学び直しなど)と仕事を両立しやすい
  • 注意散漫になりやすい環境でも「短時間集中+休憩」で生産性を維持できる

といった点で支持されています。
ニューヨーク・ポスト では、「自宅勤務の生産性を高める要因の一つ」として取り上げられました。


2-3 懸念・批判的な視点

一方、Inc. の複数記事では以下の懸念も示されています。

  • 勤務と休憩の境界が曖昧になり、常時オン状態 に陥るリスク
  • チームでの同期やコラボレーションにおける 調整コスト増
  • 「自由な勤務時間設計」が逆に 自己管理ストレス を生む可能性

これらの課題は、リモートワーク初期と同様に、制度設計と文化整備の両立が不可欠であることを示しています。


2-4 管理・制度設計の観点

メディアや専門家の多くは、「マイクロシフティングを成功させるには以下が必須」としています。

  • 成果ベース評価の導入
  • コアタイム(全員が同時稼働する時間帯)の設定
  • 可用性・稼働時間を共有するツールの整備
  • 健康・過重労働のモニタリング体制

また、全社導入ではなく「一部チームでのパイロット導入」から始めることが推奨されています。


3. 総括

海外では、マイクロシフティングが 「概念」から「試行・導入」へと移行しつつある初期段階 にあります。
現時点で明確に制度化している企業は Land O’Lakes など一部に限られますが、
若年層や柔軟勤務を求める人材の増加により、
今後は「時間を設計する働き方」として制度化が進む可能性が高いと見られます。


参照データ・出典(一次情報・報道記事)

一次情報(制度・調査)

報道・分析記事


この記事は、2025年10月時点の一次資料・主要報道を基に構成しました。

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