Dry Januaryは一過性の流行ではなかった

「断酒」が社会現象になり、暮らしの設計を変え始めている

「1月はお酒を飲まない」。
Dry Januaryは、もともとそんなシンプルなチャレンジだった。

ところが近年、この取り組みは単なる健康習慣を超え、社会現象としての様相を帯び始めている。欧州では参加者が広がり、米国ではワイナリーや飲食業態が“飲まない人”を前提に体験設計を見直す動きまで出てきた。さらに最近では、酒に限らず「スマホや配信をやめるDry January」へと拡張する報道も現れている。

Dry Januaryはいま、何を変えつつあるのだろうか。


Dry Januaryの原点と、確かな一次情報

Dry Januaryは、英国のNGO Alcohol Change UKが主導する公式キャンペーンだ。参加者向けにアプリやサポートプログラムを提供し、「1月の断酒」を社会的に後押ししてきた。

注目すべきは、単なる呼びかけではなく、効果に関するエビデンスが積み上がっている点だ。
研究では、1か月の断酒でも血圧や体重、インスリン抵抗性、肝機能などの改善が確認されている。さらに、Dry Januaryを経験した人の一部は、その後も飲酒量を抑える傾向が続くことが示されている。

「たった1か月」だが、身体と行動に変化が起きる。
この点が、Dry Januaryを一過性のブームで終わらせなかった大きな要因だ。


フランスを中心に、欧州で「社会現象化」

とりわけ象徴的なのがフランスの動きだ。
報道によれば、2025年には数百万人規模がDry Januaryに参加し、国内のアルコール消費量も減少傾向にある。興味深いのは、政府が公式に後援していない年であっても、NGOや医療・依存症分野の専門家を軸に、取り組みが定着している点だ。

メディアはDry Januaryを、乳がん検診を促す月間キャンペーンなどになぞらえ、「健康をめぐる社会的行動」として位置づけ始めている。
また、個人で黙々と行う断酒ではなく、「友人や同僚と一緒にやる」「ソバーイベント(アルコールを飲まない社交の場)に参加する」といった集団的な行動に変化していることも指摘されている。

ここではすでに、「お酒をやめるかどうか」以上の意味が生まれている。


米国では、ワイナリーが“飲まない人”を前提に動き始めた

Dry Januaryが産業構造に影響を与え始めている例として、米国・カリフォルニアのワイナリーの動きは示唆的だ。

報道によると、ナパの一部ワイナリーでは、ノンアルコールのテイスティング体験を正式なメニューとして設計し始めている。ワインの代替として脱アルコールワインを出すのではなく、スパークリングティーやハーブ飲料などを組み合わせ、「飲まなくても楽しめる体験」を成立させようとしている。

背景には、米国全体で進むアルコール消費の減少と、ノンアル市場の高成長がある。
重要なのは、これがDry Januaryの「1月限定対策」ではなく、通年の体験設計の見直しに発展している点だ。

「飲まない人」は例外ではなく、新しい標準になりつつある。


ノンアルは「代替品」から「新しい嗜好体験」へ

欧州・米国の報道を通じて共通しているのは、ノンアルが単なる“我慢の代替”ではなくなっているという点だ。

低・ノンアル飲料は、味の複雑性やペアリング、ストーリー性を備えた高付加価値商品へと進化している。
バーやレストラン、ワイナリーは、「飲めない人向けの選択肢」ではなく、「飲まないこと自体が選択される体験」を提供し始めている。

Dry Januaryは、この流れを一時的に可視化する装置として機能している。


「酒をやめる」から「生活をリセットする」へ

さらに最近の報道では、Dry Januaryの意味が別の方向へも拡張している。

BloombergやWSJは、断酒に慣れてしまった人々が、「スマホをやめる」「配信サービスを断つ」といった別の節制チャレンジに取り組む動きを紹介している。
ここでは、Dry Januaryはもはやアルコールの話ではない。

年始に、自分の生活習慣を見直し、負荷を減らし、リセットする。
その対象が、酒からデジタルへと広がっているのだ。


Dry Januaryが示す3つのトレンド

一連の一次情報と報道を踏まえると、Dry Januaryは次の変化を象徴している。

第一に、断酒が個人の健康習慣から社会的ムーブメントへ移行していること
第二に、ノンアルが代替ではなく、新しい嗜好・体験として産業に組み込まれ始めていること
第三に、節制そのものが「生活設計のメニュー」として定着しつつあること

Dry Januaryは、流行語ではなく、暮らしの再設計を促す合図になりつつある。


参照URL一覧

Alcohol Change UK(Dry January公式)
https://alcoholchange.org.uk/help-and-support/managing-your-drinking/dry-january

Alcohol Change UK(Dry Januaryのエビデンス)
https://alcoholchange.org.uk/help-and-support/managing-your-drinking/dry-january/about-dry-january/the-evidence-behind-the-dry-january-challenge-benefits-and-long-term-impact

学術研究(temporary abstinence/Try Dry)
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9510241/

Le Monde(フランスでの参加拡大・社会現象化)
https://www.lemonde.fr/en/science/article/2026/01/02/dry-january-s-lasting-benefits-win-over-more-and-more-participants_6749003_10.html

Euronews(欧州でのDry January)
https://www.euronews.com/my-europe/2025/01/08/dry-january-which-is-the-most-sober-curious-european-country

San Francisco Chronicle(ノンアル・テイスティング体験)
https://www.sfchronicle.com/food/wine/article/california-wineries-nonalcoholic-tastings-21235577.php

Bloomberg(Dry Januaryの拡張:スマホ・配信断ち)
https://www.bloomberg.com/news/newsletters/2026-01-02/dry-january-alternatives-include-giving-up-streaming-tv-and-smartphones

Wall Street Journal(デジタルデトックス)
https://www.wsj.com/health/wellness/what-a-digital-detox-can-do-for-you-e4b0b893

The Guardian(低・ノンアル飲料市場)
https://www.theguardian.com/thefilter/2025/feb/04/best-low-alcohol-non-alcoholic-drinks

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