CES 2026で世界が確認したAIの転換点 ──日本報道との静かなズレ


はじめに

―― AIは「画面の中」から現実世界へ出た

2026年1月、ラスベガスで開催されたCESを取材した世界各国のメディアは、例年とは異なるトーンで記事を書いている。
その共通点は、技術の派手さや未来像の誇張ではなく、「AIの位置づけが変わった」という事実への言及だった。

The Verge、Reuters、AP通信、WIRED、The Guardian、EL PAÍS、Corriere、Times of India、SCMP。
国も文化も異なる媒体が、CES 2026を
「生成AIの次の段階を示す展示会」
と位置づけている。

これまでAIは、クラウド、アプリケーション、チャットUIといった「画面の中」で語られてきた。
しかしCES 2026の報道で繰り返されたのは、
AIがロボット、家電、車、身体の周辺に入り込んだ
という観察だった。


第1章|最も多く報じられたテーマ

Physical AI ―― 動き、判断し、介入するAI

CES 2026で最も多くの報道量を集めたのは、ロボットとPhysical AIだった。
AP通信、Reuters、The Verge、WIRED、The Guardian、EL PAÍS、Corriere、Times of India、SCMPはいずれも、
「AIが物理的存在として登場した」
ことを中心テーマに据えている。

報じられた具体例は共通している。

  • 家庭内で洗濯や片付けを行うヒューマノイド
  • 階段を上るロボット掃除機
  • 介護や補助を想定した自律ロボット
  • 家電や車に組み込まれ、状況判断を行うAI

Reutersは、CES 2026を
「生成AIの次に来た“現実世界AI”のショーケース」
と表現した。

ただし、多くの媒体は一線を引いた書き方をしている。
The GuardianやReutersは、ヒューマノイドについて
「象徴的な存在ではあるが、実用化はまだ距離がある」
と評価している。

EL PAÍSやCorriereは、技術そのものよりも、
ロボットが生活空間に入ることへの違和感
に注目した。

それでも、ほぼすべての報道が一致した点がある。
AIは、もはや画面の中にとどまらない
という事実である。

そして、特筆すべきは
海外報道が 製品スペックよりも「AIの位置づけの変化」
中心事実として扱っている点である。
日本の報道との差異はここにある。


第2章|AIを「動かす側」への視線

半導体・AIチップ・AI PC

Physical AIの拡大と並行して、多く報じられたのが半導体と計算基盤だった。
Reuters、The Verge、Times of India、heise、TecMundoは、
NVIDIA、AMD、Intelの発表を詳細に追っている。

報道の焦点は、

  • データセンター向けのラックスケールAI
  • yotta-scaleと表現される計算基盤構想
  • NPUを搭載したPC、可変・拡張型ノートPC

といった「AIを成立させる側」の技術だった。

一方で、論調は一様に慎重である。
ドイツのheiseやフランスのLes Numériquesは、
Dell幹部の発言を引用しながら、次のように伝えている。

「消費者はAIという言葉だけではPCを買わない」

多くの媒体が、
AI性能そのものよりも
形状、用途、価格、使い勝手
が再び重要になっていると指摘した。

CES 2026の半導体報道は、
AIが差別化要素ではなく前提条件になった
ことを示している。

そして、日本との報道の差という観点でいうと、
日本では「新CPU」「新GPU」「処理性能」「消費電力」・・・
といった 製品スペック中心の事実整理が主な報道軸である。

その結果、「AIが当たり前になった」という業界側の認識変化が、
相対的に見えにくくなっていると感じる。


第3章|技術は進化したが、主役ではなかった

ディスプレイと映像技術

ディスプレイ技術についても、複数の媒体が詳細に報じている。
Times of India、Les Numériques、The Vergeは、
RGB MiniLED、micro RGB、130インチ級ディスプレイといった進化を紹介した。

技術的な評価は高い。

  • 高輝度
  • 高コントラスト
  • 映像表現の限界更新

しかし、報道の書き方には明確な変化がある。

多くの記事が、
「技術的には圧倒的だが」
「生活はどこまで変わるのか」
という問いを付け加えている。

過去のCESでは主役だったテレビは、
CES 2026では
高度に洗練された一分野
として扱われている。

ここは日本の報道と大きく異なるところだ。主役はすでにここにはいない。

映像技術は進歩した。
しかし、展示会全体を代表するテーマではなかった。


第4章|クルマは夢を語らなくなった

車載AIと体験設計

モビリティ分野の報道も、過去とは異なる。
Reuters、heise、EL PAÍS、Times of Indiaは共通して、
完全自動運転が前面に出ていない
点を指摘している。

代わりに報じられたのは、

  • AIコックピット
  • 運転支援の高度化
  • 車内体験の最適化

EL PAÍSは、NVIDIAの発表を
「車とロボットを同じ現実世界AIとして扱った」
と表現した。

CES 2026におけるモビリティ報道は、
自動運転という約束を語る場ではなく、
人とAIがどう共存するかを示す場

として描かれている。

ここも日本との報道温度差があるところである。
日本では相変わらず「自動運転の有無」「EV・車両技術」といった従来軸で整理されることが多い。


第5章|可能性と慎重さが同居した

ヘルステックとウェルネス

ヘルステック分野も、複数の媒体が取り上げている。
AP通信、heise、TecMundo、Corriereは、
非侵襲の血糖測定や尿分析を行うスマートトイレを紹介した。

評価は概ね一致している。

  • 技術的には革新的
  • 日常に近い応用が想定される

同時に、ほぼすべての記事が
精度、医療規制、プライバシー
を課題として明記している。

多くの報道は、ヘルステックを
「将来性は高いが、商用化には慎重さが必要な領域」
として位置づけた。

日本報道では、
この 慎重さ自体が主題になることは少ないと感じてしまう。


第6章|静かな進化にとどまった

XR・スマートグラス

XRやスマートグラスについての報道は存在するが、量は限られている。
heise、Frandroid、TecMundoは、
軽量化や実用性向上を評価した。

ただし、論調は一貫している。
CES 2026の中心テーマではない

AIとロボットが注目を集めた今回のCESでは、
XRは確実に進歩しつつも、
主役の座には至らなかった。


終章|世界の報道が一致した結論

世界各国の報道を並べると、
CES 2026に対する評価は驚くほど一致している。

CES 2026は、
生成AIの次の段階――
AIが現実世界に入り始めたことを示した展示会だった

同時に、

  • 過剰なAIへの懐疑
  • 実装の難しさ
  • 社会との距離感

も、これまで以上に明確に書かれている。

それは、AIがブームの段階を越え、
成熟フェーズに入ったことを示す報道のトーンでもあった。

CES 2026は、
未来を誇張する場ではなくなった。

AIが実際に使われ始めたことを、
世界の記者たちが事実として確認する場になった。




参照した情報一覧(海外報道/URL)

🇺🇸 米国・英語圏(テック/通信社)

The Verge

WIRED

Associated Press(AP)

Reuters


🇬🇧 英国

The Guardian


🇪🇸 スペイン語圏

EL PAÍS

Cinco Días(EL PAÍS系)


🇩🇪 ドイツ語圏

heise


🇫🇷 フランス語圏

Frandroid

Les Numériques


🇮🇹 イタリア語圏

Corriere


🇧🇷 ブラジル

TecMundo


🇮🇳 インド

Times of India


🇭🇰 中国・香港(英語)

South China Morning Post(SCMP)


🇰🇷 韓国(通信社・索引)

Yonhap


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