「AIはどれだけ電気を使っているの?」調べてみた

はじめに
最近、「AIは電力を食う」という話をよく聞くようになりました。データセンター、原発、電力不足、そんな言葉が一緒に語られ始めています。
しかし、多くの場合、議論はとても曖昧だと感じています。ChatGPTを1回使うとどれくらいなのか。画像生成は重いのか。AIエージェントは何が違うのか。
この記事では、ChatGPT・画像生成・AIエージェントの「電力使用量」について、公開されている研究・企業の公表値・観測データをもとに、2026年時点での情報を整理します。
結論から言うと「AIが働き始めたこと」で電力爆発が始まっています。
まずは、電力の単位「kWh」を理解しよう
AIの電力を理解するために、最初に一つだけ必要な知識があります。それが kWh(キロワットアワー)です。
これは「電気の強さ」ではなく、どれくらい電気を使ったかの「総量」を表します。計算式はシンプルで、電力量 = 電力 × 時間です。
例えば、1000W(1kW)のヒーターを1時間使うと1kWhになります。では10kWhはどれくらいでしょうか。電気ケトルなら約70回の沸騰、エアコンなら約10〜15時間、冷蔵庫なら3〜5日分、そして日本の平均家庭でほぼ1日分に相当します。
10kWh はおよそ家庭1日の生活電力。
それがどれほど大きなエネルギーかを、まず頭に入れておいてください。以下、これが基本単位となります。
ChatGPTの電力は?
OpenAIが公表した推計では、ChatGPTの平均1クエリあたりの電力は約0.34Whです。
これはどれくらいかというと、10WのLED電球を約2分点灯する程度。人間が普通にチャットする限り、AIはそれほど電気を使いません。「AIは環境に悪い」という印象とはかなり違います。
画像生成は?
研究測定では、画像生成は1枚あたり約1〜3Wh程度です。スマートフォン1回の充電(約10Wh)の数分の一に過ぎず、数十枚生成しても、家庭電力としてはまだ大きくありません。
チャットAIも画像生成も、電力問題の主役ではないと言えるでしょう。ここがまず重要なポイントです。
コーディングAIは?
ここから状況が変わります。
Claude Code、Codex、Cursor、Gemini Code Assistantなどのコーディング支援AIは、長い文章を読み、修正し、説明します。複数ファイルの解析、リトライ、テスト、修正が連続して発生するため、電力は数十Wh規模になります。
これだけ聞くと、家庭電力レベルではありませんが、数字をみるとChatGPTや画像生成の10〜100倍に跳ね上がっていることがわかります。けれども、これが次への布石となります。
AIエージェントという怪物
2025年以降、AIの使い方が変わりました。それがAIエージェントです。
エージェントは「質問に答えるAI」ではありません。自分で仕事を進めるAIです。内部では、計画、コード生成、実行、テスト、修正、再計画、外部検索、ファイル解析、自己評価、こうした処理を数十〜数百回ループします。
1回の推論ではなく、連続した労働プロセスになっているのです。
電力量の桁が変わる
チャットAIは1回の推論で完結しますが、エージェントは推論の連続ループです。この違いにより、電力はまったく異なるスケールになります。
ChatGPT1回は約0.3Wh、画像生成1枚は1〜3Wh、コード作業は数十Wh、そしてエージェント1タスクは0.1〜0.8kWh、エージェント常駐1日なら0.5〜2kWh以上になります。
ここで初めて、家庭電力の領域に入ります。
並列運用により爆増する電力量
さらに重要な点があります。AIはPCで動いているわけではなく、データセンターのGPUで動いています。1台のGPUは400〜700W程度の電力を消費します。
そして並列タスクを動かすと、3タスク、10タスクを同時並行に行うことができます。並列とはつまり、サーバーを複数台同時に動かすことを意味します。当然、電力量もそれに比例して大きくなります。
結果として、エージェントの並列運用では1日あたり3〜10kWhに達します。
10kWhとは何を意味するのか
10kWhは、家庭1日分の電気使用量です。
チャットに換算すると、約3万回のChatGPT利用に相当します。
つまり現在起きているのは、「人間がAIを使う」から「AIが自動で動く」という変化です。
まとめ
かつてのAIの電力問題は「学習」、つまり巨大モデルの訓練が話題の中心でした。しかし現在は、エージェントの常時稼働、それも並列処理という利用方法の広がりが主要因になっています。
AIが検索エンジンの代替だったころは、電力問題は限定的でした。AIが「労働者」になった瞬間、電力は爆増し、生活インフラと同等以上のスケールになっていきました。
よくある誤解として、「画像生成が電力を食う」「モデルが巨大だから」という声があります。しかし実際は違うことがわかりました。
AIの電力問題とは、生成AIの問題ではありません。デジタル労働が始まったこと、この構造変化が問題なのです。
電力という観点でみると、私たちは今、産業革命に近い変化の入口に立っています。この電力の議論は、AIの性能ではなく、「AIをどれだけ働かせる社会にするか」という社会設計の議論へと移り始めています。
そして、忘れてはいけないのが、まだこれは序の口だということです。AIエージェントを並列利用している人の割合はまだ1%未満です。一部のAI関連企業を除き、通常の企業ではほぼこの業務は行なっていません。
これが、通常企業にまで一般化したとき、もはや電力量はこれまでにない加速度的に爆増します。その影響は、通常の電力供給システム全体に影響を及ぼします。
つまり、この問題は、私たち全員に関係する問題なのです。
いまからこの問題を議論していく必要があるのではないのでしょうか?

