「買わない」が美しい時代へ —アンダーコンサンプション・コアとは?

総合点 85点
| 評価項目 | スコア | 満点 |
|---|---|---|
| 未注目度(日本語圏) | 14 | / 15 |
| インパクト(産業・社会) | 17 | / 20 |
| 実現性(2〜3年) | 10 | / 10 |
| 新規性(既存トレンドとの差分) | 17 | / 20 |
| 証拠の強さ(一次情報/データ) | 9 | / 10 |
| 衝撃度(ワクワク・ドキドキ) | 18 | / 25 |
はじめに
「ハウル動画」というコンテンツをご存知だろうか。大量に購入したものをカメラの前に並べ、次々と紹介していくスタイルのTikTokやYouTube動画のことで、一時期ソーシャルメディアを席巻していた。「これを見せたい」という欲望が可視化される快感。見ている側も、どこか高揚感があった。
ところが今、そのまったく逆のコンテンツがじわじわと広がっている!!!
「今月、買わなかったもの」を紹介する動画だ。古い服を何年も着続けていること、使い切る寸前まで絞り出した化粧品のチューブ、親の世代から引き継いだ家電。それらを誇らしげに見せる投稿が、TikTokを中心に多くの共感を集めている。
これが「アンダーコンサンプション・コア(Underconsumption Core)」と呼ばれるムーブメントだ!!!
それは2024年夏に始まった
このトレンドが最初に注目を集めたのは2024年の夏にさかのぼる。
ドイツ在住の18歳、Maya Feldmanさんが投稿したTikTok動画がきっかけだった。彼女は中学時代から着ている服や、古いドライヤーをカメラの前に並べ、「まだ使えるものを捨てない生き方」を淡々と紹介した。その動画は世界中でバズり「anti-haul(アンチホール)」スタイルの先駆けとなった。
#underconsumptioncore のハッシュタグはその後もTikTok上で息長く拡大し、2026年現在もコンテンツが増え続けている。テーマはシンプルで、既存のものを使い切る、修繕して使い続ける、衝動買いをしない、という日常の実践だ。
ただの節約ではない!
このムーブメントを興味深くするのは、単なる「お金がないから買えない」という話ではない点だ。
むしろ「意図的に買わない」ことが、ひとつのアイデンティティとして表現されている。
持っているものを使い切ることが「かっこいい」、古いものをまだ大切に使っていることが「誇らしい」という文化的な反転が起きている。
Visubrainというソーシャルリスニングツールの調査によれば、TikTok上でアンダーコンサンプション関連の投稿1件あたりの平均いいね数は633で、#TikTokMadeMeBuyIt の平均238の約3倍に達する。「買わない」コンテンツの方が熱心に支持されているという状況だ。
アンダーコンサンプションの意味することは?
アンダーコンサンプション・コアは、消費文化の変容を示唆している。
インフルエンサー産業の収益モデルはこれまでは「消費の誘発」で成立してきたといっても過言ではないが、このムーブメントはそこに真正面から疑問を投げかけいる。
市場調査大手Mintelは、2026年のグローバル消費者予測として「Anti-Algorithm」をあげている。
アルゴリズムは、私たちに便利さをもたらす方向に進化してきた。けれども、それは人々のアイデンティティや価値観を歪めているかもしれないと認識されはじめている。SNSのアルゴリズムは「欲しいもの」「今話題のもの」を出し続けるが、その誘導そのものへの反発として「買わない実践」を公言することが、ひとつの主体性や自己主張の表明になっている。
アンダーコンサンプション・コアの広がりは、このAnti-Algorithmが表面化したものと言える。
もう少し深ぼってみると・・・
一方で、アンダーコンサンプション・コアを批判的に見る声もある。
実際には「お金がなくて買えない」ことを「意識的な選択」と言い換えているだけではないか、富裕層のインフルエンサーが貧困生活を「イメージアップのためにアピール」しているだけではないか、という指摘だ。実際にこの様な行動をしている人が増えているかどうかの統計もまだ出てきていない。
実際の統計データや、このような複雑な側面を総合的に見ていくことが、このトレンドを正確に理解するには必要なのだろう。
ちなみに、日本の文脈で考えてみると、日本には「もったいない」という概念がある。使えるものを無駄にしないという精神は、むしろ伝統的な価値観として根付いてきた。ミニマリストブームや断捨離の流行も、すでに一定の市場を作ってきた。
ただ、アンダーコンサンプション・コアが提示しているのは少し角度が違うように感じる。なぜなら、それはミニマリズムのような「持ち物を厳選する洗練さ」ではなく、「使い古されたものを誇示する」という美意識だからだ。擦り切れた服、古びた道具、それらを見せることが「自己表現」になっている。これまでこういった「節制の自己表現」というのはあまりなかったのではないだろうか。
まとめ
アンダーコンサンプション・コアが文化として定着するか、それとも一時的なトレンドとして消えていくかは、まだ分からない。
ただ、「なぜ私たちはそんなに買い続けるのか」を問うことは大切だ。
その問いが多くの人に刺さっているからこそ、アンチホール動画はハウル動画の3倍のエンゲージメントを獲得しているのだろう。リペア、リセールの需要は今後も着実に伸びていくだろうし、メルカリのようなエコシステムが「新品を買う」ことと同等の文化的地位を獲得する日も、案外近いのではないだろうか。
参照情報
1. Wikipedia — Underconsumption core
https://en.wikipedia.org/wiki/Underconsumption_core
2. CNBC — What TikTok 'underconsumption core' trend means for your money(2024年8月)
https://www.cnbc.com/2024/08/19/what-tiktoks-underconsumption-core-trend-means-for-your-money.html
3. BuzzFeed — "Underconsumption Core" Is The Latest Controversial TikTok Trend To Go Viral(2024年9月)
https://www.buzzfeed.com/alanavalko/underconsumption-core-tiktok-trend-explainer
4. Visibrain — Underconsumption Core: The TikTok Counter-Trend You Need to Know About
https://www.visibrain.com/blog/underconsumption-core-deinfluencing
5. Green Network Asia — Living with Less: Does TikTok's Underconsumption Core promote sustainable living?(2025年5月)
https://greennetwork.asia/gna-knowledge-hub/living-with-less-does-tiktoks-underconsumption-core-promote-sustainable-living/
6. Mintel — Mintel Announces 2026 Global Consumer Predictions(Anti-Algorithm含む3予測)
https://www.mintel.com/press-centre/mintel-announces-2026-global-consumer-predictions/
7. Experian — 2026 Consumer Insights: Trends Marketers Should Know(32.8%データ一次情報)
https://www.experian.com/blogs/marketing-forward/what-2026-consumer-insights-mean-for-marketers/

