ポケットに入るAIスーパーコンピュータ ーNvidiaのDGXに続き、Tiiny AI Pocket Labが示す「ローカルLLM時代」の始まり

ポケットに入るAIスーパーコンピュータ

はじめに

AIはクラウドで動かすもの。
大規模モデルは巨大なGPUサーバーが必須。
そう考えるのが一般的でした。

しかしこの前提を大きく揺るがす製品が登場しました。
米 Tiiny AI Inc が発表した
Tiiny AI Pocket Lab
です。

このデバイスは、わずか14.2センチの筐体に、100Bから120B規模の大規模言語モデルをローカルで直接動作させる演算能力を搭載。
ギネス世界記録でも「100B LLMをローカルで動かせる最小MiniPC」として認定されました。

AIをクラウドに頼らず手元で動かすという、新しい潮流を象徴する発表です。


Tiiny AI Pocket Labとは何か

世界最小のAIミニスーパーコンピュータとして認定

Tiiny AI は2025年12月10日に香港でプレスリリースを発表し、
Tiiny AI Pocket Lab がギネス世界記録に認定されたことを明らかにしました。
カテゴリは
The Smallest MiniPC 100B LLM Locally

つまり、100Bパラメータ級LLMをローカルで実行できる最小のミニPCという評価を得ています。

スペックの概要

プレスリリースに記載された公式仕様は次の通りです。

  • CPU: ARMv9.2 12コア
  • AI演算性能: 約190 TOPS
  • メモリ: 80GB LPDDR5X
  • ストレージ: 1TB SSD
  • 消費電力: TDP 30W
  • サイズ: 14.2 × 8 × 2.53 cm
  • 重量: 約300g
  • モデル対応: 最大120Bパラメータ級モデルをローカル動作可能と説明
  • 完全オフラインで利用可能
  • LlamaやQwenなどのオープンソースモデルをワンクリックで実行できると案内

スペックだけを見れば、軽量PCやスマートフォンの領域をはるかに超え、
一般的なデスクトップワークステーションに迫る構成です。


どのように大規模LLMをローカルで動かすのか

Tiiny AIが根拠としているのは、次の2つの技術です。

TurboSparse

  • ニューロン単位のスパース活性化を利用し
  • モデル全体ではなく必要な一部だけを動かして推論する方式
  • 推論速度を2から5倍改善する研究成果に基づくと説明

PowerInfer

  • 上海交通大学の研究チームが開発した高速LLM推論エンジン
  • ホットなパラメータとコールドなパラメータを分離し
  • ホット側をNPUやGPU、コールド側をCPUで処理
  • メモリ消費を抑えながら高速度を実現するアプローチ

両者を組み合わせることで、大容量メモリと中程度の演算能力でも、巨大モデルを実用的な速度で動かせると説明しています。


クラウドからローカルへ

なぜ今回の発表が重要なのか

プレスリリースでは次のようなメッセージが強調されています。

  • 今日のAIはクラウド依存が大きく
    プライバシー、遅延、コスト、エネルギー消費などで問題を抱えている
  • モデル推論をローカルで行えれば
    個人や小規模チームでも大規模モデルを使える
  • インテリジェンスをデータセンターからユーザーの手元に戻すことが重要

つまりこれは、

大規模LLMはクラウドでしか動かない
という常識を書き換える挑戦

と言えます。


まだ第三者レビューは存在しない

注意が必要なのは、現時点で

  • 独立メディアの技術レビュー
  • 実機ベンチマーク
  • 長時間動作の評価
  • 推論速度や安定性の検証

といった第三者による検証は公開されていないという点です。

現在出ている情報の多くは、PR Newswire や共同通信PRワイヤー、業界ニュースサイトなどの
同一プレスリリースの転載が中心です。

そのため、性能がどこまで実測値に近いかは、今後のレビュー待ちとなります。


起こりつつある構造変化

1. LLM利用の構造が変わる

これまで

  • 大規模LLMはクラウドで動かす
  • GPUクラスタは企業しか持てない

という構造が当たり前でした。

しかし Tiiny AI の登場は、この前提を崩し、

大規模LLMがパーソナルデバイス化する未来
をかなり具体的に示しています。

2. 個人向けAIスーパーコンピュータ市場の誕生

NVIDIAもデスクトップ型の
DGX Spark を発表しています。

これとあわせて考えると、

  • デスクトップ側からNVIDIA
  • ポケット側からTiiny

という形で
Personal AI Supercomputerという新カテゴリが現実のものになりつつあります。

3. データ主権やプライバシー価値が高まる

ローカル推論が主流化すれば

  • 個人情報を外部へ送らない
  • オフラインでも高性能AIが使える
  • クラウド障害に左右されない

という利点が一般ユーザーにも浸透します。

AIが「クラウドだけでなくローカルで完結できる」世界は、
企業のAIサービス戦略にも影響を与える可能性があります。


まとめ

Tiiny AI Pocket Lab は、
AIがクラウドからローカルへ回帰する可能性を具体的な形で示した事例です。

もちろん、実際の性能検証はこれからです。
しかし、個人がポケットに入るサイズのデバイスで
100B級モデルを直接動かせる未来が見え始めたことは、
AI利用の常識を変える大きな転換点になるかもしれません。


参照一覧

一次情報
https://en.prnasia.com/releases/apac/tiiny-ai-unveils-the-world-s-smallest-personal-ai-supercomputer-tiiny-ai-pocket-lab-44636.shtml
https://kyodonewsprwire.jp/release/202512026732
https://www.guinessworldrecords.com
(MiniPC 100B LLM Locally カテゴリ認定ページ、PR内で参照)

TurboSparse関連
https://arxiv.org/abs/2406.11062
https://arxiv.org/abs/2402.16845

PowerInfer関連
https://arxiv.org/abs/2312.11514
https://github.com/SJTU-IPADS/PowerInfer

報道転載
https://www.bastillepost.com/hongkong/article
https://finance.yahoo.com
https://www.morningstar.com

NVIDIA DGX Spark参考
https://nvidianews.nvidia.com
https://www.tomshardware.com


必要であれば、

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