そのアクセス、本当に「人」ですか?
突然ですが、衝撃的なレポートがあったのでそこから!
Webアクセスの過半数がボットになる時代に突入しているという衝撃
Cloudflareのレポートによると、Webへの要求の57.5%をボットが占めたとされていました。
この数字だけを見ると、「インターネットを使っているのは、もう人間よりボットの方が多い」と感じるかもしれません。
正確にお伝えすると、ここで数えられているのは人の数ではなく、Webサーバーに送られたHTTPリクエストの数です。
1人の人間が数ページを見る一方で、1体のボットが短時間に何千、何万ページへアクセスすることもあります。そのため、57.5%という数字を、そのまま「利用者の半分以上がボット」と読むことはできないのかも知れません。
それでも、この数字が示している変化は小さくないと私は思います。
Web上で発生する通信のかなりの部分が、すでに人間の直接操作によるものではなくなっているからです。
アクセスが増えても、人が増えたとは限らない
これまでWebサイトや広告などでは、PV、セッション数、ユニークユーザー数などを見ながら、サイトの状態を把握してきました。
たとえば、ある企業のオウンドメディアで、月間PVが10万から15万へ増えたとします。
これまでは、まず「記事を読む人が増えた」と考えるのが自然でした。
しかし、その考えが通用しなくなっており、今後は、その5万PVの増加が、
- 検索エンジンのクローラーによるものなのか
- AIサービスの情報収集によるものなのか
- 価格比較ボットによるものなのか
- 不正アクセスを試みるボットによるものなのか
- 実際の読者によるものなのか
を分けて考える必要があります。
仮にPVが50%増えていても、問い合わせ件数、商品購入、メルマガ登録がほとんど変わっていなければ、増えたアクセスの多くが人間ではなかった可能性があるのではないでしょうか。
逆に、PVは増えていなくても、問い合わせや売上が伸びているなら、人間による質の高いアクセスが増えているのかもしれません。
つまり、アクセス数だけでは、以前ほど状況を説明できなくなっているのです。
サイト運営の現場では、どのような勘違いが起きるのか
たとえば、ある記事のPVが急に増えたとします。
担当者は、その記事が読者に評価されていると考え、似たテーマの記事を追加で制作するかもしれません。
しかし実際には、生成AIのクローラーが繰り返しアクセスしていただけだったとします。
この場合、アクセスの増加を人間の需要だと誤認し、編集方針や予算配分まで変えてしまう可能性があります。
ECサイトでも似たことが起こります。
特定の商品ページへのアクセスが急増したため、人気商品だと判断して在庫を増やした。しかし、そのアクセスの多くが価格収集ボットや商品比較エージェントだった場合、実際の購入需要とは一致しません。
広告メディアでは、PVが増えても広告を見ているのが人間でなければ、広告主が期待する価値は生まれません。
サーバー費用は増えているのに、広告収益や会員登録は伸びない、という状態も考えられます。
このように、ボットの増加は単にアクセス解析の数字を汚すだけではありません。
その数字をもとに行う、企画、投資、在庫、広告、評価の判断にも影響します。
もちろん、人だろうがボットだろうが問題ないという場合は問題にはならないでしょう。けれども、多くの場合は、人が見ている前提で、その次のアクションや考察・分析をしているのではないでしょうか?
AIエージェントは、従来のボットより見分けにくい
検索エンジンのクローラーは、ページを収集して検索結果へ登録することが主な役割でした。
一方で、現在増えているAIエージェントは、ページを読むだけではありません。
情報を比較したり、商品を探したり、フォームを入力したり、APIを呼び出したり、条件によっては予約や購入まで行います。
利用者がAIに、
「来週大阪で泊まれる、駅から近くて1泊1万5000円以下のホテルを探して」
と頼んだとします。
AIは複数の予約サイトやホテルの情報を確認し、価格や立地、空室状況を比較します。
この過程では、ホテルのサイトにアクセスが発生します。
しかし、そのホテルのページを人間は直接読んではいません。
最終的にAIが3つの候補だけを利用者に提示し、利用者がその中から選ぶなら、多くのサイトはAIに読まれても、人間には見られないままなのです。
アクセスは発生しているのに、人間との接点は発生していない。
この状況が、従来のアクセス解析では見えにくい部分ではないでしょうか。
SEOで流入が多いサイトは、AIにも評価されるのか
人間向けSEOで成果を出しているサイトは、AIにも見つけられやすいと考えられます。
検索エンジンに正しく登録され、多くの検索語で上位に表示されているサイトは、AIが情報を探す際にも候補に入りやすいためです。
ただし、検索流入が多いこと自体を、AIが評価しているとは限りません。
たとえば、同じテーマについて次の2つのページがあるとします。
一方は、大きなメディアが公開した読みやすいまとめ記事です。検索流入は多いものの、内容は複数の公開情報を整理したものです。
もう一方は、アクセス数の少ない企業の公式資料ですが、最新の価格、仕様、利用条件が正確に掲載されています。
人間が検索する場合は、読みやすいまとめ記事が選ばれることも多いでしょう。
一方、AIが「現在の正確な仕様」を答えるためには、アクセス数の少ない公式資料の方が使いやすい可能性があります。
AIにとって重要なのは、単純な人気よりも、
- 質問に対する答えが明確であること
- 数字や条件が具体的であること
- 情報源が確認できること
- 内容が新しいこと
- 他では得られない一次情報があること
などです。
そのため、SEOで強いサイトと、AIが回答に使いやすいサイトは重なる部分があるものの、完全に同じではありません。
AIに使われても、サイトへの訪問は増えないことがある
もう一つ認識しておくべきなのは、AIがサイトの情報を利用することと、人がサイトを訪問することは別だという点です。
少し分かり難いので、説明すると・・・
従来の検索では、利用者は検索結果からサイトを訪問して、そこで答えを読みました。
たとえば、「確定申告の提出期限」を調べる場合、検索結果から税務関連のページへ入り、本文を読んで確認します。
AI検索では、回答画面に期限がそのまま表示されることがあります。
利用者はそこで疑問を解決できるため、元のサイトを開かないかもしれません。
情報は利用されていますが、サイトへのアクセスは発生しません。
この違いは、情報提供を主な価値としてきたサイトにとって特に重要です。
用語解説、FAQ、簡単なハウツー、ニュース要約などの領域は、AIが回答を作りやすい一方、回答画面の中で利用者の目的が完結しやすいと言えます。
今、見直す必要があるのは数字の読み方
ボットが増えたからといって、PVやセッション数がすぐに無意味になるわけではないでしょう。
ただし、それらを単独で見て「人が増えた」「人気が高まった」「成果が出た」と判断するのは、以前より危険になっています。
今後は、少なくとも次の数字を組み合わせて見る必要があります。
- 人間と考えられるアクセス
- 検索エンジンやAIクローラーによるアクセス
- AIサービスから送られた流入
- 問い合わせ、購入、登録などの実際の行動
- アクセス増加に対する売上や成果の変化
たとえばPVが30%増えていても、問い合わせも売上も増えていない場合は、そのアクセス増加を成果として扱う前に、アクセス元やユーザーエージェント、行動内容を確認する必要があります。
反対に、PVが減っていても売上が維持されているなら、簡単な情報収集はAI側で完結し、購入意向の高い人だけがサイトへ来るようになった可能性もあります。
単純に「アクセスが増えたか、減ったか」ではなく、そのアクセスが何を意味しているのかを見ることが重要になります。
まとめ
Cloudflareが示した57.5%という数字は、人間がインターネットから消えたことを意味するものではありません。
一方で、Web上の通信の多くが、自動化されたシステムによって発生するようになったことは確かです。
その結果、これまで自然に結びつけて考えていた、
- アクセスが増えること
- 人に読まれること
- 人気が高まること
- 売上や広告価値が増えること
が、同じ意味ではなくなりつつあります。
PVが増えても、人が増えたとは限りません。
AIに情報を使われても、人がサイトを訪れるとは限りません。
SEOで上位にいても、AIがそのサイトを最も信頼するとは限りません。
今回の変化を考えるうえでは、ボットが何%になったかだけでなく、私たちが見ている数字が、実際には誰のどのような行動を表しているのかを丁寧に確認する必要がありそうです。


